アクセスジャーナル山岡俊介編集長を応援する理由|敗訴も抱える不屈の記者

アクセスジャーナル山岡俊介編集長の不屈の取材姿勢と敗訴を抱えて書き続ける独立系記者の姿を劇画調タイポグラフィで表現したアイキャッチ画像 編集長語録

アクセスジャーナルのサイトで「山岡俊介」の名前を初めて見たとき、私は思わず苦笑した。

美味しんぼと共に育った世代の私にとって、「山岡」と聞けば反射的に主人公・山岡士郎の顔が浮かぶ。しかも肩書は記者で、独立系で、大手が触れない案件に切り込んでいる。

偶然と片付けるには、両者には並べてみたくなる類似点がいくつもある。ただし、ファンであるからこそ最初に書いておきたい。AJ山岡氏は数々の「負け」の履歴を抱えている。敗訴も、誤報も、長年の確執もある。

そして同じことは、美味しんぼの山岡士郎にも言える。彼は何度も海原雄山に負けてきた。負けっぱなしの時期も長かった。

本記事は、両者の「負けの記録」も含めて並べる。それでも私はAJ山岡氏を応援している。理由は最後に書く。

「山岡」という名前を見たときに浮かんだこと

私は1980年生まれで、子どもの頃から美味しんぼをアニメと単行本で追ってきた。海原雄山の理不尽さに腹を立て、山岡士郎の屁理屈に笑う、というのが日常の風景だった。

雁屋哲・花咲アキラ『美味しんぼ』は、1983年に『ビッグコミックスピリッツ』で連載が始まった。40年以上続く長期作品で、東西新聞社文化部記者の山岡士郎が「究極のメニュー」企画を担当する物語である。

その「山岡」が、独立系ジャーナリズムの第一線に実在していた。アクセスジャーナル編集長・山岡俊介氏。記者として書き続け、訴えられ、自宅を放火され、それでもサイトを止めない。

この符合に最初に反応したのが「あ、また山岡か」という感覚だったのは、おそらく美味しんぼ世代の偏った反射である。

同じ「記者」、似た「タブーなき姿勢」

山岡士郎は『東西新聞』文化部の記者である。一見気怠そうで皮肉屋だが、いざ取材に入ると徹底的に粘る。食品添加物、産地偽装、農薬、捕鯨、コメ輸入自由化など、当時の大手メディアが踏み込みにくかった領域に切り込んだ。

参考:Wikipedia「美味しんぼ」

山岡俊介氏は、休刊した『噂の真相』のタブーなき姿勢を継承する独立系メディアの編集長を務める。本人は自らを「ストレイ・ドッグ(野良犬)」と呼ぶ。記者クラブ制度の「飼い犬」である大手メディアに対して、フリーランスは縛りのない「野良犬」だ、という意味である。

2014年3月17日付の毎日新聞の取材に対し、山岡氏は「週刊誌などと違って自分の判断で発信できるのが面白い」と語っている。媒体の論理ではなく、自分の判断で書く——という点で、士郎と俊介氏のスタンスは重なる。

アクセスジャーナルが切り込んできた案件——成果の側面

具体的な成果を並べると、AJ山岡氏の追及力は際立つ。

武富士・武井保雄会長逮捕(2003年12月)。山岡氏は2000年12月から2001年2月にかけて、武富士社員に依頼を受けた探偵社から電話盗聴を受けた。山岡氏は告訴し、世界有数の億万長者だった武富士会長・武井保雄は2003年12月に逮捕されている。なお、この盗聴を山岡氏に告発したのも依頼を行った社員本人である。

出典:Wikipedia「山岡俊介」

安倍首相自宅放火未遂事件・通称「ケチって火炎瓶」(2018年)。2018年6月から9月にかけてAJ紙上で連載されたスクープ。ネット上で「#ケチって火炎瓶」のフレーズで拡散し、同年7月17日の参議院内閣委員会で山本太郎委員が安倍首相に質問するに至った。2019年5月発売の望月衣塑子著『「安倍晋三」大研究』(ベストセラーズ)では、本件について山岡氏のインタビューが30頁にわたり掲載されている。

国民民主党・玉木代表実弟の投資詐欺疑惑(2024〜2025年)。AJは2024年から玉木雄一郎・国民民主党代表の実弟・秀樹氏の投資詐欺疑惑を継続報道。2025年5月27日の国民民主党定例記者会見では玉木代表に質問が出て、「アクセスジャーナル」「山岡編集長」の名が連呼される事態になった。

参照:アクセスジャーナルch動画

これらは、大手が報じないか、報じるとしても腰の引けた書き方になる案件である。山岡氏は20年以上、こうした切り込みを続けてきた。

雄山に負け続けた山岡士郎——『美味しんぼ』対決の真実

ここから「負け」の話に入る。まず美味しんぼ側から整理する。

山岡士郎は『究極のメニュー』、海原雄山は『至高のメニュー』を担当し、それぞれ東西新聞と帝都新聞の紙面で対決する。読者の印象では「最終的には和解する親子」だが、対決の戦績だけ見ると、山岡は雄山に何度も負けている。

第22巻の豆腐対決で山岡が初勝利を収めたとされるが、これは雄山が「わざと負けた」との見方が定着している。雄山は「究極が汲み出し豆腐を超えるものは作れない」と勝負を拒もうとした上で、自分の有利な情報をオチヨ経由で山岡側に流させた——とも見える展開である。

参考:Real Sound「『美味しんぼ』究極対至高の名勝負」

卵黄の味噌漬け対決では、山岡が「完膚なきまでに敗れた」状態で、物言いがついてやり直しの末に引き分けに修正された。

参考:note「美味しんぼ、究極対至高の1回目の対決」

石垣島の長生き料理対決で勝った時も、対決後に審査員から「雄山が誘導しなければ士郎は今日の発想を得られなかった」と言われている。要するに、雄山の助けで勝っている。

そして作品自体への批判もある。第592話「福島の真実」を含む福島原発関連の描写、遺伝子組換え作物・農薬の安全性に関する記述が大規模な抗議を呼んだ。雁屋哲氏の事実誤認・偏見、科学的立証に基づかない批判——という指摘は、Wikipedia「美味しんぼ」項目にも整理して記載されている。

山岡士郎は、対決の勝率では負け越し、作品としても抗議を受けた経歴を持つ「不完全な記者」である。それでも作品は40年以上続き、読者は彼を主人公として読み続けてきた。

山岡俊介氏が抱える敗訴の履歴——具体的な訴訟記録

ここからは現実の山岡俊介氏の「負け」を並べる。私が把握しているだけでもこれだけある。

(1) ユニバーサルエンターテインメント訴訟・敗訴確定(2014〜2015年)

2012年10月26日、AJはユニバーサル社がフィリピンのカジノプロジェクトで現地の政府関係者に3500万ドルを賄賂として贈っていたと報道。同社はこれを「事実無根」として山岡氏とAJを提訴した。

  • 2014年1月20日:東京地裁、ユニバーサル社の主張を全面的に認め、謝罪広告掲載・記事削除・慰謝料165万円の支払いを命令
  • 2014年6月11日:東京高裁、控訴を実質棄却
  • 2015年4月17日:最高裁、上告棄却で確定

参考までに、ほぼ同じ疑惑を報じたロイターも同社に提訴されたが、2017年7月19日にロイター側の勝訴で確定している。同じ疑惑でも報じ方の差で結果が分かれた事例である。

出典:Wikipedia「山岡俊介」 / ロイター「対ロイター訴訟、ユニバーサルの敗訴確定 最高裁が上告棄却」

(2) 公認会計士・能勢元氏訴訟・敗訴(2021年〜2024年)

東京フィナンシャル・アドバイザーズ代表で公認会計士の能勢元氏に関する5件の記事(2021年10月〜12月掲載)を巡る訴訟。先行して2021年12月6日には、能勢氏側からの人格権侵害の仮処分申立てを受け、AJ側の記事は全面削除されている。その後の本訴(名誉毀損)でAJ側は一審・控訴審ともに敗れ、判決が確定した。

  • 2021年12月6日:仮処分決定により記事全面削除
  • 2023年2月21日:東京地裁本訴判決、能勢氏の主張を全面的に認め、慰謝料144万円の支払いと謝罪広告掲載を命令
  • 控訴審では5争点中1点で真実相当性が認められたものの、結論は維持
  • 2024年初頭に判決確定、AJトップページに謝罪文を1ヶ月間掲載

本訴一審判決の骨子は厳しい。「何ら裏付けなく推測を記載」「真実性の立証ができていない」「真実と信じた相当の根拠もなく」「記事削除を命じる仮処分を受けた後にも、新たに記事を投稿しており、行為態様は執拗かつ悪質」——というものである。

出典:アクセスジャーナル「VS能勢元(公認会計士)氏訴訟——『上告受理申立て理由書』を公開」 / アクセスジャーナル「仮処分は記事全面削除も——海外ファンド『ホワイトナイト』=能勢元公認会計士、これだけの根拠」

(3) unbanked訴訟・係争中(2026年5月時点)

東証スタンダード上場の「unbanked」から記事削除仮処分申立を受け、3回目の審尋まで進行している。本記事執筆時点で結論は出ていない。

参照:アクセスジャーナル 2026年5月7日付記事「『unbanked』の実質オーナーはやはり百津士文氏」

(4) 東京アウトローズとの確執(2004〜2021年)

山岡氏は2002年1月、ジャーナリストの奥村順一氏と「東京アウトローズ」を共同創設し編集長を務めた。しかし2004年9月、編集方針の相違から編集長を辞任。

奥村氏は、山岡氏が武富士スキャンダルで多額の示談金を得ていたことを「警察権力と癒着した」と糾弾し、20年近くにわたって両者は泥沼の確執を続けた。第三者(週刊報道サイト主筆・佐藤昇氏)の仲裁提案も、双方が「お互いのどちらかが死ぬまで糾弾報道を続ける」と一蹴して拒否している。2021年5月、奥村氏の死去で確執は終息した。

出典:Wikipedia「東京アウトローズ」

(5) 学校法人「国際医療福祉大学」訴訟・敗訴確定(2020年)

栃木県大田原市の学校法人「国際医療福祉大学」と同大の高木理事長に関する記事を巡る訴訟。AJ側は控訴審でも敗れ、判決確定とともに記事は削除された。

  • 2020年6月18日:控訴審判決、学校法人に88万円、高木理事長に55万円(共に2017年5月からの年5分の利子を加算)の支払いを命令
  • 原告側の請求額は計5357万円であった
  • 判決確定とともに該当記事は削除

出典:アクセスジャーナル「<お知らせ>国際医療福祉大学側との民事訴訟の結果」(2020年9月15日)

(6) 訴訟戦績の参考値

『週刊朝日』2009年6月12日号の取材時点では、山岡氏の訴訟戦績は22件中19勝1敗2分(和解)とされていた。

しかしその後、ユニバーサル訴訟の敗訴確定(2015年)、国際医療福祉大学訴訟の敗訴確定(2020年)、能勢元氏訴訟の敗訴確定(2024年)と相次いでおり、2009年時点の数字はもはや実態を表していない。

「騙された」を自ら公表する記者——AJ誤報事件

ここまでが「敗訴」の話だった。だが、もう一つ、AJ山岡氏が抱える生々しい「負け」がある。

2024年2月、山岡氏は「アジャイルメディア・ネットワーク」という上場企業の株価操縦疑惑に関する情報提供を受けた。接触してきたのは女性(後に偽名と判明、実体は「鵜飼理恵」)と男性(南谷康宗、後に養子縁組で「五藤康宗」に改名)の2人組である。

女性は社長の愛人を名乗り、「社長は株価操縦の責任を全て押し付けられ、週明けの月曜には解任される」と訴えた。真の黒幕は同社の大株主であり、その証拠となる密談の音声データを預かっている、と主張した。

山岡氏は週末、指定された銀座の「フレイ法律事務所」に足を運んだ。そこには女性に加え、株取引に詳しいとする男性・南谷康宗が同席していた。南谷は休日の法律事務所の鍵を所持しており、自ら鍵を開けて山岡氏を招き入れた。法律事務所という場所の信用力と、鍵を持っていたことから、山岡氏は南谷を「この件を担当している弁護士」だと完全に誤信してしまった。

実際には、南谷は同名の「株式会社HURRAY(フレイ)」をこの事務所内に同居登記させていただけで、弁護士資格を持たない人物だった。

2人組が証拠として提示した音声データには、後日実際に発表されることになる業績下方修正やM&Aといったインサイダー情報が正確に含まれていた。実在する有名な仕手筋の声も入っていた。南谷はこの音声について「大株主の声も入っている」と虚偽の解説を加えた。

「月曜日の社長解任を阻止しなければならない」という切迫したタイムリミットの設定、音声内のインサイダー情報が事実と合致していたこと——この2つの要素から、山岡氏は音声内の「大株主の声」の確実な裏付けを取る時間がないまま、正義感から告発記事の掲載に踏み切った。

しかし真相は、こうだった。

南谷と女性は、アジャイル社の大株主から数十億円規模の株式を買い取る契約を結んでいたが、資金調達が頓挫し、株を買えなくなっていた。契約上、買えなかった場合には購入代金と同額の巨額な違約金を支払うペナルティが存在した。

そこで彼らは、売主である大株主が「株価操縦という違法行為を行っている」というでっち上げの疑惑をAJに記事化させ、それを大義名分として株式売買契約を白紙撤回し、違約金の支払いを免れようと企んだ——というのが真相だった。

つまり山岡氏は、巧妙に設計された罠にかかって誤報を書いた。

驚くべきは、山岡氏自身がこの経緯をYouTube動画「アクセスジャーナルを騙して、記事を書かせた2人組を本紙で報じたところ、診療所を使った株価操縦疑惑浮上。また騙した2人組が騙されたアクセスジャーナルを名誉毀損で提訴すると…。本末転倒!深層追及する‼︎」(2024年6月27日公開)で正面から公表していることである。

参照:YouTube動画

しかも騙した側はAJを名誉毀損で逆提訴している。山岡氏は「騙されて誤報を書いた被害者」と「逆提訴された被告」を同時に抱えながら、続報を発信し続けている。直近の続報動画は2026年2月26日公開で、南谷(五藤)が歴史ある診療所の理事に就任して売上金を借金返済に流用していた疑惑、非弁行為でプロサッカー選手の家族などから資金を引き出していたトラブル、名前を変えたり海外(スペイン)に拠点を設けて追及を逃れる工作などが報じられている。

参照:YouTube続報動画

普通のメディアなら、自分の誤報は静かに削除して終わらせる。山岡氏は、誤報を書いた経緯と、騙した人物の正体と、その後の追加事実を、すべて自前の媒体で公開し続けている。

自ら誤報を公表する姿勢は、アジャイル事件だけにとどまらない。2025年2月19日、AJは東証スタンダード上場「クシム」の内紛報道のうち、「RS Technologies」と同社代表・方永義氏に関する記述について、「裏取りが不十分だった」ことを認め、記事1本を丸ごと削除、別の2本から該当部分を削除、関連するYouTube動画1本も削除した。これは判決を経た削除ではなく、AJ自身の判断による自主削除である。

参照:アクセスジャーナル「<お知らせ>『クシム』内紛の、『RS Technologies』及び同社代表・方永義氏に関する部分をすべて削除しました」(2025年2月19日)

これは「負け」の中でも、もっとも痛みを伴う種類の負けだと私は思う。同時に、ジャーナリストとしての姿勢が最も問われる場面でもある。

不完全な記者を、それでも応援する理由——私の立ち位置

ここまで読んでいただいて、「ずいぶん負け越している記者だな」と思われたかもしれない。私もそう思う。

それでも私はAJを定期的に読んでいる。理由は3つある。

1

山岡氏は20年以上、大手が踏み込まない領域に切り込み続けている。武富士、ユニバーサル、ケチって火炎瓶、玉木代表実弟疑惑——リスクを引き受けて書く記者は、日本に多くはない。2005年7月には自宅を放火され、2007年8月にはAJ宛てに脅迫状とカッターナイフの刃が送りつけられている。それでも山岡氏はサイトを止めなかった。

2

負けた時に逃げない。敗訴は受け、控訴・上告で争い、騙された誤報も自前の媒体で公表する。これは「負けを抱えて書き続ける」姿勢である。完璧を装うために過去を消す書き手より、不完全さを公開する書き手のほうが、私は信用できる。

3

美味しんぼの山岡士郎を40年読んでいると分かるのだが、対決の勝敗そのものよりも、追い続けるプロセスのほうが読者の記憶に残る。料理で雄山に何度負けようと、士郎は次の対決に向かう。雄山と和解した後も、彼はまた料理に向き合う。AJ山岡氏もそのタイプの記者である。

不完全な記者を、不完全であると知った上で読む。これは、ファンの一つの読み方として成立する。

完璧な記者は、おそらくこの国にはいない。記者クラブの中にも外にも、いない。だとすれば、誰の不完全さを引き受けて読むのか——という選択になる。私は、AJ山岡氏の不完全さを引き受けて読む側を、これからも続ける。

不屈の男・山岡編集長は今日もどこかで誰かを取材している。私は今日もそのサイトを開く。それだけの話である。

更新履歴

  • 2026年5月:初版公開
  • 2026年5月:敗訴履歴に国際医療福祉大学訴訟(2020年)を追加。能勢元氏訴訟の経緯を仮処分・控訴審確定まで補強。誤報事件にクシム/RS Technologies事件(2025年2月)を追加